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A工事・B工事・C工事とは何か?オフィス工事の注意点を解説


オフィス物件の工事はA工事・B工事・C工事に分けられています。
例えば、オフィス退去の際には原状回復工事が必須となりますが、その時の工事が3種類あるのです。

この3種類のカテゴリー分けですが、同じ建物の中の工事のため、大した違いが無いと思いがちです。
しかし、3つのカテゴリーを混同するべきではありません。実は、発生する費用にも及び得る問題なのです。

そのため、仮に知らないままでいると、引っ越しなどの際に余計な費用を支払う事態にもなるでしょう。
この記事ではオフィス物件工事のA工事・B工事・C工事の違いについて取り上げます。読み終わる頃には3つのカテゴリーについてイメージできることでしょう。

目次

・1.オフィスの工事は区分で分けられている

・2.A工事・B工事・C工事はどの点で違うか

・3.工事のコストダウンについて

・4.A工事・B工事・C工事の具体例

・5.事前確認の必要性について

・6.まとめ

 

オフィスの工事は区分で分けられている

A工事・B工事・C工事の3つで違うのは、工事の発注や区分、そして業者選定などの権利と費用負担です。
各工事単位で義務や権利が違うため、オフィスの工事をする側は覚えておかなければいけません。
仮に不明確なままで放置するならば、権利が無いのに費用負担を強いられる可能性が発生します。
なお、工事の費用は大きなオフィスになると、それだけ高額です。仮に費用負担を間違えてしまうと、それだけ大きな損失となります。

 

A工事・B工事・C工事はどの点で違うか


ここでは、A工事・B工事・C工事の違いについて取り上げます。

工事をする範囲が違う

まず挙げられるのは工事をする範囲です。
それぞれを挙げると次の通りとなります。
・A工事:建物全体に関する工事
・B工事:専用部分でありながら建物に関する工事
・C工事:オフィス専用部分の工事

また、それぞれの例としては以下のものが挙げられます。
・A工事:オフィスビルの外装や外壁、トイレやエレベーターなどの部分
・B工事:分電盤、給排水、空調設備などの部分
・C工事:内装、電話設備、照明などの部分

このように、工事の区分によって施工する範囲が異なります。テナント側としては、施工の範囲を覚えておかなければいけません。

発注と費用負担が違う

一般の工事は施工業者に発注し、その工賃を支払うことになりますが、オフィスの場合は工事の区分によって発注と費用負担が違います。
具体的には次の通りです。
・A工事の発注と費用負担:貸主
・B工事の発注と費用負担:借主
・C工事の発注と費用負担:借主

以上の通りに区分されますが、特に注意が必要なのはB工事です。
B工事は確かに「専用部分の工事」ではありますが、それと同時に建物に関係する部分が多いからです。
仮に、オーナー側とオフィス側に認識の違いがあった場合には、費用負担などでトラブルとなり得ます。
事前の段階で、認識の差が無いように十分に話し合うべきです。

業者選定が違う

業者選定についてもA工事・B工事・C工事で異なります。
具体的には次の通りです。
・A工事の業者選定:貸主
・B工事の業者選定:貸主
・C工事の業者選定:借主

ところで、A工事とC工事においては、業者選定から発注・費用負担までが貸主か借主かで決まります。
しかし、B工事では発注と費用負担が借主であるにも関わらず、業者選定は貸主で、借主には業者選定の自由はありません。
そのため、仮に借主が良い施工業者を見つけたとしても貸主に採用されるとは限らず、デメリットを被ることもあり得ます。

所有権が違う

所有権も各工事によって異なります。
具体的には次の通りです。
・A工事の所有権:貸主
・B工事の所有権:貸主
・C工事の所有権:借主

ここでもB工事について注意をしなければいけません。というのも、B工事は業者選定だけでなく所有権も貸主になるからです。
しかも、費用負担は借主になるため、貸主の都合で高額の費用負担を強いられる可能性が出るのです。
例えば、借主が100万円の設備を検討していたにも関わらず、貸主が120万円の業者を選んでしまった場合です。
借主は業者の決定権も所有権も持っていないため、20万円の損失を被る恰好になるのです。

 

工事のコストダウンについて

工事のコストダウンは工事の仕様と業者選定によって決まります。
コストは工事の規模を小さくして、ローコストの資材を使えばそれだけ下がるからです。
例えばオフィスの床に敷くフロア材や壁に張るクロスのグレードを下げれば、それだけコストは下がります。

また、業者選定によってもコストは変わります。施工業者の持っている機材やノウハウによって施工期間が変わりますし、職人の人件費にも変わるからです。
このような工事は自社で業者選定を行い、自社で支払えば、そのようなコストダウンは成立するでしょう。

しかし、オフィス工事の場合はそのようには行きません。
というのもB工事のように業者選定の自由がこちらには無く、オーナー側にあるからです。

そして、工事に使う資材も多くの場合にはB工事の選ぶ業者の都合によって決まるでしょうから、こちらの要望が通らない可能性があるのです。
そのため、B工事のコストダウンについてはオーナー側との交渉によりますが、難しい場合が多いです。
ですから、最初のオフィス工事の時に、C工事の比率を多くするなどの工夫が必要となるでしょう。

 

A工事・B工事・C工事の具体例


A工事・B工事・C工事の工事箇所の例を挙げてみましょう。

A工事の例

まずはA工事の例です。

ビルの躯体

ビルの躯体工事はA工事の代表です。
工事の例としては配管を追加するケースが挙げられます。
古いビルになると、既存の配管の利用が厳しくなって、新たな配管の設置を考えなければいけません。
その場合、コンクリート躯体の工事が必要となります。

エレベーター

エレベーターは建物全体に関する共用設備のため、A工事に含まれます。
オフィスビルのエレベーターは大きな工事が発生しないように思えるかも知れません。
しかし、エレベーターであっても内装部分の変更もありますし、駆動部分の修繕などもあります。
尚、今では車いす対応のため、エレベーターに鏡を貼るケースが増えました。企業のバリアフリー化の一環として、このような工事も増えるかも知れません。

非常階段

非常階段も建物全体で使う設備のためA工事に含まれます。
オフィスの中にいると非常階段そのものを使うことが避難訓練程度になってしまうことが多いため、工事のイメージが難しいかも知れません。しかし、非常階段は屋外に設置されるために風雨の影響をダイレクトに受けます。そのため、塗装工事をはじめとするメンテナンス工事が必要です。

トイレ

トイレも建物全体の使用となるためA工事に含まれます。
トイレは日進月歩の設備の1つで、オフィスビルとしてのクオリティを保つためには古いままでは良くありません。場合によっては外部の企業の評価を落としかねない要因ともなるため、新しい設備であるべきです。
しかし、トイレはA工事となるため、テナント側は権利を持っていません。状況によっては古いままで放置される可能性もあるため、オーナー側への働きかけがあるべきです。

B工事の例

次にB工事について取り上げます。

パーテーション工事

パーテーション工事は大きなタイプになると躯体への固定も必要となります。そのため、B工事になることが多いです。それだけに業者選定が重要です。
特に、電動タイプの可動間仕切りの場合は業者によって構造もコストも異なります。設置する設備が違ってしまうと、オフィスにおける使い方そのものが違います。業者決定権を持つオーナー側との粘り強い交渉が必要になるでしょう。

エアコン工事

エアコン工事もB工事になる場合が多いです。
さて、エアコンもメーカーによって機能とコストが異なります。また、発注先によっても掛け率が異なる場合があり、最終的なコストが違うケースもあります。
そのため、業者選定が非常に大切です。コスト削減のためにも、オーナーとの交渉が重要となります。

分電盤などの増設

分電盤を増設するときもオフィス単位になるためB工事に含まれます。
今はパソコンなどの機器を多く使うため、電気関係の設備を増設するケースが少なくありません。
そのために電気工事が必要なのですが、工事は業者によって異なることが意外とあります。事前に価格を調べるなどして、オーナーとの交渉に臨むべきでしょう。

上下階をまたぐ場合の階段など

テナントの中には複数階を1つとする物件があります。1階から2階までを1つのテナントとし、1階と2階の間の床と天井は後付けで作るイメージです。
このような工事は非常に大掛かりで躯体工事のように見えますが、B工事として扱われる場合があります。
工事は規模が非常に大きくなるため費用も高額になりますが、業者決定権はオーナーにあります。交渉が大きなカギとなるでしょう。

スプリンクラーなどの工事

スプリンクラーなどの工事もB工事に含まれます。
これらの装置はビルの保全に関係するように見えますが、躯体とは離れる場合があるため、B工事のケースが多いです。
なお、スプリンクラーは防災機器のため、価格交渉を優先させない方が良いかも知れません。防災は消防と密接に関係し、カタログだけの判断は危険です。

C工事の例

次にC工事を取り上げましょう。

オフィスの内装

内装は壁紙やフロア材などの工事です。費用負担も権利もテナント側にあります。B工事よりも自由度が高いです。
しかし、オフィスの内装工事は遮音性などにも大きく関係します。コストダウンばかりに走ってしまうと、下の階のフロアや隣からクレームが来ることが考えられ、仕様についての検討が非常に大切です。

オフィス内のインターネット工事

インターネット工事もC工事に含まれます。
今ではwifiが主流ともなりますが、速度の関係から優先LANを選ぶケースも少なくありません。
その場合はケーブルを壁や床下に納めます。
なお、wifiの場合はB工事との関係も考えなければいけません。
例えば、電波を遮る素材がB工事で使われていると、wifiが繋がりにくくなります。他の工事との兼ね合いのチェックが大切になるでしょう。

電話工事

電話工事もC工事に含まれます。
基本的には電話工事業者が行いますが、電路の設置などは考える方が無難です。工事が容易になれば業務を妨げる要因が減るため、電話工事業者の仕事にも配慮をするべきでしょう。

オフィス内の照明工事

照明工事もC工事です。
オフィスの場合は一般的な配線と照明の配置で構わないでしょうが、オフィスのエントランス部分の工事には内装のデザインに合わせなければいけません。デザイナーとの打ち合わせが大切になるでしょう。

 

事前確認の必要性について


不動産契約は一般的な内容が決まっているケースが多いのですが、グレーゾーンが時として見られます。そして、交渉がグレーゾーンに関する部分に入ると、両者の意思の祖語が生まれやすくなります。
そのため、事前の両者の確認が非常に重要です。
ここでは、どのような点について確認すべきかを挙げてみましょう。

工事の範囲

基本的にはA工事・B工事・C工事の区分は共通な場合が多いです。しかし、全部が同じであるとは限らず、物件単位で工事区分が違うケースも見られます。ですから、最初から借主と貸主のA 工事・B工事・C工事の認識を一致させなくてはなりません。
例えば、オフィス移転などで間仕切り壁の位置や仕様を変える場合です。壁は納まりと仕様によっては、A工事かB工事かの区分に迷うことがあります。そして、この時に双方に意思の疎通が不完全だと、後でトラブルに発展するケースがあり得ます。

原状回復工事

オフィスを退去する場合には原状回復工事が必須になりますが、この時も工事区分を確認しておかなければいけません。というのも、内装工事にはB工事かC工事かの判断に迷うケースがあるからです。
例えば、室内にパーテーションを設置した場合など、その仕様によってはB工事かC工事かが分かれます。ところが、工事区分が不明確だと、権利関係で混乱します。確認は非常に大切なのです。

 

まとめ

A工事・B工事・C工事について取り上げました。それぞれの工事の区分が分かったことでしょう。
また、工事区分によってはコストダウンの難しさを認識できたものと思います。
ともかくとして、オフィスの工事は区分決めなどの最初の段階が肝心です。工事の区分を割り振る時は、自社に有利になるように決めることが大切になるでしょう。

また、原状回復工事に関するご依頼は「ビルディングデザイン」がおすすめです。
お見積りとご相談は完全無料となっております。まずはお気軽にお問合せいただければと思います。
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