オフィスのBCP対策!重要性とオススメの対策15選
企業の経営を脅かすのは経済の影響だけではありません。地震や津波をはじめとする自然災害の他にも、伝染病の猛威など多岐に及びます。
企業もそのような危機に対策を打たなければいけません。仮に、災害が発生したとしても事業は継続しなければいけないからです。
そこで検討しなければいけない課題が「BCP対策」です。
ここではオフィスのBCPについて、災害の種類から具体的な対策について紹介します。
目次
オフィスのBCP対策とは何か
まずは「BCPとは何か」から解説します。
BCPとは何か
BCPは事業継続計画と言われます。
意味としては、「大きな災害の被害を受けたとしても、事業の中断をしない、あるいは中断したとしても事業再開を迅速に行うために立てる計画」といったものです。
企業が遭遇する災害はさまざまですが、対策を立てない場合には、企業活動が復旧できなくなるレベルのダメージを受け得ます。
例えば、食品メーカーが自然災害によって工場が復旧できないダメージを受けた場合、生産がストップするため利益が得られません。仮に保険の適用を受けたとしても、製造困難の期間が長引けば、それだけ企業としてのダメージも大きくなるでしょう。
その点、BCPを高いレベルで作っておけば、ダメージの抑制や素早い復旧が可能となるのです。
どのような災害があるか
BCPは可能な限り具体的であるべきです。そのためにも災害に対する分析が必要と言えます。
そこで、ここでは企業の被り得る災害を挙げてみます。
自然災害
まず挙げられるのが自然災害です。
具体例としては次のようなものがあります。
1.地震、火山などによるもの
・地震
・津波
・土地の液状化
・火砕流
・噴煙
・ガス
2.風水害
・強風
・豪雨
・洪水
・竜巻
・雹(ひょう)
3.斜面災害
・土石流
・地すべり
・土砂崩れ
・落石
4.その他の気象災害
・長雨
・日照不足
・雷
・冷害
・干ばつ
人為的な災害
災害は自然災害の他にも、人為的なものもあります。
・オフィスにおける情報漏洩
・オフィスビルの手抜き工事
・交通事故
・著しい不良品の生産
・窃盗などの犯罪被害
・火災
感染症などによる災害
感染症などによるリスクも忘れてはいけません。
・伝染病の蔓延
・従業員の重い病気の罹患や休職
・従業員の死亡
コンピューターウィルスなどによる災害
その他にもコンピューターウィルスなどによる災害もあり得ます。
・悪意のある者によるシステムダウン
・コンピューターからの情報漏洩
オフィスの具体的なBCP対策
このように災害は多岐に渡ります。
さて、BCPは可能な限り具体的でなければいけません。
そこで、ここでは具体的なBCP対策を取り上げてみましょう。
オフィスビル選び
まずは事業拠点となるオフィス選びに関して挙げてみましょう。。
オフィスビルへが著しいダメージを被ると事業活動も深刻な悪影響を受ける可能性があるため、BCP対策は非常に大切です。
1.耐震性
まず挙げられる点がビルの耐震性です。耐震性に不足があるならば、大地震が発生した場合にビルの倒壊や崩落などの可能性が出るためです。
具体的なBCP対策としては次の確認があります。
・築年数の確認
・耐震構造の確認
築年数を確認する理由は1981年を境に耐震基準が変わっているためです。それ以前の基準を「旧耐震」、以降のものを「新耐震」と呼び、耐震性が大きく違います。
また、耐震構造は「耐震構造」「免振構造」「制振構造」の3種類です。どれも同じように見えますが、この構造の違いによって、室内の揺れの度合が違います。つまり、家具などの倒壊リスクが違うのです。
2.セキュリティ
ビルのセキュリティ体制はオフィスの安全性に直結します。そして、事業活動にもダイレクトに関係するのです。
そのため、BCP対策としてビルを選ぶ際には、ビルの防犯体制や管理会社のセキュリティ体制の確認も欠かせません。
具体的にはビルのエントランスのドアまわりの仕様や非常口の状態など、そして郵便受けなどにチェックが必要です。
また、契約している警備会社と契約内容の確認もするべきでしょう。契約の際に「警備会社は〇〇だから大丈夫」と言われるかも知れません。しかし、契約内容の確認は必須と考えるべきです。
3.感染症対策
感染症対策のBCPの基本は消毒液が使える点とタッチレスで操作が可能な点です。
オフィスビルは不特定の人が入るビルのため、ビル側としてはパブリックスペースの管理が重要となります。良い例がエントランスやトイレで、消毒液の管理が万全かを確認しましょう。
また、可能な限りタッチレスに出来ているかの確認も大切です。
例えば、エントランスのドアは、手動であれば接触が前提です。しかし、自動ドアであれば接触が無いため、感染リスクも減ります。
4.修繕対応
自然災害は時として人知を超えるときがあります。そのため、ビルの破損などにも迅速に対応しなければいけません。
ですから、BCP対策としてビルを選ぶ際には、修繕対応の計画や準備についての確認も大切です。
尚、修繕対応の確認はあくまでも副次的に位置づけるべきです。最初の確認は、やはりビルの耐震性などの基本性能の高さとすべきでしょう。
5.水や電気の確保
地震などの災害が発生すると電気や水などのライフラインにも多大な影響を及ぼします。
特に電気は重要で、オフィスの機器が使えないだけでなく、エレベーターの使用も危うくなります。夜間に被災した場合など、暗い中の避難も考えられるでしょう。…これは足元が見えないだけに、非常に危険です。
そのため、BCP対策としてビル選びに関しては、非常用の電源確保や水の状態がどうなるかを確認しましょう。
尚、水や電気の問題は全部をビル任せにするべきではありません。夜間の非難のためには、オフィスでも懐中電灯などを常備する方がベターでしょう。
6.ビルの周辺環境
ビルの周辺環境の確認もBCP対策としては大切です。
例えば、低すぎる地点に建っているならば豪雨の際に雨水が流れ込む可能性があります。また、周囲に防火の点で疑問の残る建物があった場合、こちらのビルへの延焼も予測されます。
他にも、従業員の安全確保のため、避難所の有無も確認すべきでしょう。
いずれにせよ、ビル選びはビルそのものだけでなく、周辺の確認を忘れるべきではありません。従業員の安全確保は事業推進の面からも最重要のためです。
オフィス内装
次にオフィス内装に関する対策を挙げましょう。
有事の際に最重要となる課題が「避難」についてです。
7.避難経路の確保
BCP対策としての従業員の安全確保のためには、内装においても避難経路を考えなければいけません。通路を作るにしても十分な幅を確保すべきです。
また、避難経路の確保のためには燃えにくい素材の多用が望まれます。オフィス造りに際しては、使用する建材をチェックする方がベターでしょう。
尚、避難経路の確保にはドアの開閉状況も大きく関係します。大きな地震が来るとドア枠が歪んでしまい、開閉に支障が出る場合もあるからです。設置されているドアについても耐震性があるかを確認しましょう。
8.滑りにくい床材
非難時はとかく慌てがちで、転倒のリスクも高まります。特に、ハイヒールのような歩きにくい靴の場合は、なおさらのことでしょう。
そのため、床材には滑りにくいものが望まれます。
床のスリップ事故は平時では見られませんが、緊急時は未知数です。安全対策は「念には念を入れる」態度が非常に大切のため、床材の安全対策も必要と考えましょう。
オフィスのレイアウト・ファニチャー類
ここでは、オフィスのレイアウトやファニチャー類をBCP対策としてどうするかを取り上げます。
9.倒れないようにする
オフィスのファニチャー類は重量物です。仮に人に向かって倒れたならば、大きな事故にも繋がり得ません。また、事業に必要な書類なども入っています。
そのため「倒れない工夫」が大切です。
具体的なBCP対策としては、ファニチャー類を床材にボルトなどによる固定が望まれます。床への固定は床材の加工が伴うため、専門業者に相談しましょう。
尚、重量物は可能な限り下段に置くなど、普段の使い方にも注意をすべきでしょう。
10.避難の妨げにならない配置
ファニチャーやデスクなどの配置は避難への配慮が非常に大切です。
火災などの有事のときには、避難は可能な限り素早く行わなければいけません。仮に、デスクの配置が悪くて逃げ遅れた場合には取返しのつかない事態にもなり得ます。
そのため、BCP対策としては、ファニチャーやデスクなどのレイアウトの検討段階から、避難を意識すべきです。
配置を決める際には、避難路の幅を優先するべきでしょう。
11.ガラスの破損・飛散対策
地震や火災の発生にはガラスの破損と飛散のリスクが上がります。その場合、従業員の足元に散乱してしまい得るため、避難が難しくなります。
そのため、BCP対策として、ガラスの破損や飛散対策も重要となるでしょう。
具体的には飛散防止フィルムを窓に貼ってガラスの強度を上げることです。飛散防止フィルムを貼れば、仮に地震などでガラスが割れても飛散が抑えられます。破片が散乱する状態がなくなるため安全です。
12.消火器の設置
消火器の設置は火災対策の意味で、BCP対策の点で非常に重要です。というのも、火災を発見した従業員が消火に携わるためです。
ただし、消火器は誰もが使えなければいけません。防災訓練などの従業員教育が重要となるでしょう。
その他
BCP対策は建物や内装の対策だけではありません。企業の経営そのものを守る策もあるからです。
ここでは、その他のBCP対策を取り上げます。
13.事業拠点の分散
事業拠点を1ヶ所に集中させると、その地域が災害に襲われた場合には大きなダメージを受けます。
しかし、複数個所に事業拠点を分散させるのであれば、仮に1ヶ所が被災したとしても、企業全体までにはダメージは広がりません。
そのため、BCP対策としての事業の分散化は、経営を考える上で有効です。
具体的には経営の間接部門の分散化が挙げられます。本社機能を数ヵ所に設けて普段は地域単位の業務を行い、有事の際には被災していない事業所で業務を分散するイメージとなります。
尚、この際には経営の標準化とデータの一元管理化などが課題となるでしょう。
14.テレワークの推進
テレワークは従業員の安全確保において有効です。そのため、従業員保護の点におけるBCP対策としては高い効果と言えるでしょう。
実際、出社中に激甚災害が発生した場合には、社員は帰宅が困難になるでしょう。また、社内に災害用の食料や水の備蓄があったとしても、やはり限界はあります。
その点、テレワークであれば自宅の業務となるため、仮に社屋が被災したとしても、従業員は被害を受けずに済みます。
15.データのバックアップ・クラウドの活用
企業のデータは「財産」と言っても過言ではありません。
あるデータは経営に深く関わり、またあるデータは営業に直結します。また、製造業の場合には開発のノウハウや生産技術なども含まれるため、決して損傷を受けてはいけないのです。
そのため、データのバックアップやクラウドの活用がBCP対策となります。
尚、インターネット関連業者も選別が必要です。コストだけでなく、回線の速度やサーバーの信頼性などが違うからです。業者選定はコストだけでなくパフォーマンスも含めて決めましょう。
BCP対策と従業員
企業の取組には個々の従業員の意識が必要です。
ここではBCP対策と従業員について取り上げます。
従業員の意識の重要性
BCP対策には従業員の意識が欠かせません。個々人が責任を認識し、能動的な取り組みが大切です。
というのも、経営サイドで可能なアクションは限られるからです。
例えば、事業部門の分散化やオフィスビルの選択は経営側が担うかも知れません。しかし、オフィスの避難経路の確保などは従業員の意識によって変わるからです。…従業員が荷物を通路に山積みにしたならば、避難経路は塞がれます。
経営サイドだけでなく、従業員の意識と協力が欠かせないのです。
教育・訓練の必要性
BCP対策には従業員の意識が欠かせませんが、その意識を植え付けるためには教育と訓練が欠かせません。
教育においてはBCPの考え方から具体策の立案などについて、訓練としてはBCP対策を基軸とした防災訓練などが必要となるでしょう。
尚、このような訓練は定期的に行わなければ習得や習慣化は困難です。研修や訓練の記憶が風化する前に再度行い、いつでも対応できる体制を作りましょう。
まとめ
BCP対策について取り上げました。
BCPの基本的な考え方から実際的な対策まで把握できたことでしょう。また、従業員の意識が重要であることを再確認できたと思います。
通常業務に併せてBCP対策を意識することは負担が増えるかも知れません。しかし、有事の際には非常に重要です。個々人の意識を高め、企業の安全性を高めましょう。