クリアデスクとは何か?導入のメリットから条件まで解説
企業の情報漏洩リスクは近年になって非常に高まっていると言えます。
発信元のアドレスを巧妙に偽装したウィルス添付のメールなどは、慣れた従業員であっても危険です。仮にメール内のURLをクリックすると、情報を盗まれたり開けなくされたりもします。
ところで、そのような環境にあって登場したオフィスのスタイルが「クリアデスク」です。クリアデスクは情報漏洩の予防にも有効です。
ここでは、クリアデスクとは何かから始めて、導入のメリットや条件などを解説します。
目次
クリアデスクとは何か
まずはクリアデスクとは何かについて取り上げましょう。
クリアデスクとは何か
クリアデスクとは離席や退勤の際に、「デスクに個人情報が記載された書類やメディアを置かない状態」にすることを指します。
人にもよるでしょうが、デスクに重要情報が記載した文書やメディアが乱雑に置かれる場合は少なくありません。しかも、そのままで退勤するケースもよく見られます。
しかし、クリアデスクとするならば、デスクの上にそれらの書類・メディアを置かない状態まで戻します。デスクは乱雑ではなくなるのです。
クリアスクリーンとの違い
クリアデスクに似た言葉に「クリアスクリーン」があります。両者は混同しがちなのですが、クリアデスクは「デスクをきれいにする」のに対し、クリアスクリーンは「パソコンなどの画面を見られないように、あるいは操作されないようにする」ことです。
具体的には、クリアスクリーンは「離席の際に、パソコン画面を見えない設定にする操作」、「勝手な操作ができない設定に変える操作」を指します。この際、デスクの上の片付けまでは含みません。
働き方改革の一環
クリアデスクは働き方改革の一環とも言えるでしょう。
例えば、働き方改革には時短勤務があります。
時短勤務の従業員がデスクを片付けないで退勤すると、デスクから個人情報が洩れる可能性が出て来ます。ちょっとしたメモの場合があるかも知れませんが、そのメモに重要な情報が記載されている場合があるからです。
その点、クリアデスクが徹底されていれば、そのような情報源もなくなり、情報漏洩のリスクも減ります。働き方を変える上でのポイントともなるのです。
フリーアドレスなどの条件になる
最近、フリーアドレスを導入する企業が増えました。フリーアドレスは従業員が席を選べるオフィスで、業務効率のアップやストレス低減などの効果が狙えます。
さて、フリーアドレスの実施にあたっては、クリアデスクは重要な条件の1つと言えます。
というのも、退勤の時に片付いていないと次の日に仕事ができないからです。別の従業員が座るケースもあるため、デスクを片付けなければならないのです。
クリアデスク導入のメリット
次に、クリアデスクを導入するメリットを挙げましょう。
情報漏洩の防止に繋がる
クリアデスクは情報漏洩の防止に繋がります。
企業情報は様々なメディアに格納されています。前述のような書類の他にもUSBメモリやDVDメディアなど、あるいはクラウドなどのIDとパスワードのメモなどもあるかも知れません。
そのような情報元が悪意のある他者に見つかると、悪用される可能性もあります。
しかし、クリアデスクに取り組んでデスクの情報元を片付ければ、そのようなリスクは減ります。情報漏洩防止に繋がるのです。
整理整頓
クリアデスクはオフィスの整理整頓にも繋がります。
人にもよりますが、デスクの上を乱雑に散らかしたままで退勤する従業員がいます。…そのデスクは見苦しいことでしょう。更には、オフィスの美観にも悪影響を及ぼします。
しかし、クリアデスクに取り組むならば、そのような散らかったデスクはなくなります。席を立つときや退勤の時には片付けられるためです。オフィスもきれいになるため、整理整頓、更には美化に繋がるのです。
不要な書類が減る
クリアデスクにすると不要な書類が減ります。
これは文書の電子化が進むため、あるいは余計なプリントアウトが減るためです。
後述しますが、稟議や文書の捺印が電子化されると、紙の書類を印刷する必要がなくなります。文書は担当者から上長を経由して決裁者まで電子データでまわるためです。
尚、このようなシステムが浸透して各人が端末を持てれば、時と場所を選ばずに作業が可能となります。例えば、従来であればオフィスで紙文書を見て決済していた現状が、外出先でも確認・決済ができるのです。そのため、業務のスピードアップが狙えます。
コストが掛からない
クリアデスクはコストが掛からない情報漏洩の防止手段と言えます。というのも、クリアデスクは基本的に「従業員の作業」がベースになっているからです。
仮に、従業員の情報漏洩リスクに対して鈍感でデスクを乱雑にする場合には、高額なセキュリティ製品が必要となるでしょう。オフィス内であっても防犯カメラなどが望まれるかも知れません。
しかし、従業員がクリアデスクに取り組むならば、そのような設備は不要です。その分だけコストを抑えられるのです。
不正行為が見つかりやすい
不正行為が見つかりやすいのも特徴です。
デスクが乱雑であれば、何かが紛失したとしても気付くのが遅くなる場合が少なくありません。
例えば、小さなUSBメモリなどは紛失に気が付かないケースが考えられます。…その場合、気が付くのが遅れると、その時間に中のデータが別メディアにコピーされるリスクも生じます。
しかし、クリアデスクにするならば、デスクの上の異常に気が付きやすく、不正行為が見つかりやすいです。
クリアデスク導入の条件
クリアデスクは簡単そうに見えて、意外と簡単ではありません。いくつもの条件をクリアしなければいけないのです。
そこで、ここではクリアデスク導入の条件を挙げましょう。
端末について
まず挙げられる点は画面がパスワードロック可能なことです。
ちょっとした離席の際にも画面にロックを掛ければ情報漏洩を防げるからです。
また、端末の不正な持ち出しも防止しなければいけません。例えば、ノートパソコンやタブレット端末などは施錠可能な場所に置いて、他者が見られないようにする必要があります。
パスワード管理
パスワードは「簡単な文字列ではないこと」と「他者に見られないこと」が基本です。
例えば、パスワードに生年月日や社員番号を使うと、推察しやすいため不正利用のリスクが高まります。他者に分かりやすいパスワードは禁物なのです。
また、他者に見られないようにする点も重要です。パスワードが書いたメモを放置するケースが見られますが、その状態はセキュリティ上好ましくありません。別個の管理が必要なのです。
他にも、パスワードは入力中に覗かれるリスクもあります。
サーバーの整備
クリアデスクの場合はサーバーの整備・強化が望まれます。
というのも、紙を減らす場合には代替としてタブレット端末が必要となったり、スマートフォンからのアクセスが求められたりするからです。
当然ながら、サーバーまわりのインフラが脆弱だとデバイスのアクセスについて行けず、業務に支障を来します。
また、クリアデスクの浸透が更に進めば、非常に多くのデバイスのアクセスに耐えなければいけません。
そのための整備・強化が必要なのです。
クラウドの活用
クリアデスクの場合、サーバーと同時にクラウドの活用も推奨されます。
サーバーは高速化が可能ですが、破損のリスクを抱えます。例えば、地震などの自然災害により社屋が大きなダメージを受けた時には、サーバールームごと破損するかも知れません。
その点、クラウドと併用していればデータのバックアップは可能であり、仮にサーバーが損傷したとしても、データは生き残ります。
ただし、クラウドとサーバーですが、あくまでも「併用」がベターです。というのも、クラウドにもシステム異常や通信障害のリスクがあるからです。
文書管理システムの検討
クリアデスクにするためには紙文書を減らす必要があります。文書は可能な限り電子データで持っておくべきです。
その際に必要なのが文書管理システムです。
文書管理システムは様々な文書の一元管理が可能で、マルチデバイスにも対応します。
また、今ではドキュメントDXも広まっています。業務の効率化にも繋がる非常に強力なシステムです。
決済システムの電子化(稟議・捺印など)
一定以上の金額の物品を購入するときなどは、一般的には稟議が必要です。
そして稟議書は上長のみの捺印ではなく、複数の管理者の捺印もされています。稟議書は基本的には紙ベースが多いです。
しかし、このような稟議の流れであれば、クリアデスクの実現は難しくなります。捺印途中の稟議書の管理がクリアデスクの場合は保管手段に工夫が必要だからです。
その点、稟議や捺印をデータ上で行う決済システムは紙を必要としないため、クリアデスクに向いています。
このようなシステムは、クリアデスクの実現の条件になるでしょう。
施錠が可能な個人のロッカーなど
クリアデスクはデスクの上をきれいに片付けます。そのため、個人用のロッカーなども無くてはいけません。
特に、情報の入ったメディアは、厳重な管理が可能な収納用のアイテムが必要です。
また、ノートパソコンをはじめとする端末用の収納庫も必要となるでしょう。
尚、それらには個人情報が入っているメディアが含まれるので、施錠が必要です。
通信環境の整備
クリアデスクのオフィスは通信環境の整備が必要です。特に無線の環境は重要となります。
これはパソコン以外にもタブレット端末やスマートフォンなどを使うためです。各端末からクラウドに行く場合でも利用します。
尚、無線環境は建物の構造によっても異なります。場合によっては専門業者への相談が必要となるでしょう。
文書整理用のアイテム
クリアデスクは退勤時や離席時にデスクを片付けます。そのため、文書などを格納するアイテムが必要です。
例えば、書類をまとめておくフォルダーなどが挙げられます。
従業員はどのように取り組むか
クリアデスクはオフィスの物品だけで取り組むものではありません。従業員の意思が重要なのです。
ここでは、クリアデスク導入の際の従業員の取り組み方について解説します。
個人の意識が最重要
クリアデスクを取り組む上で最重要の条件は「個人の意識を高めること」と言えます。
メンバーの意識が低い場合には、形ばかりになってしまったり、惰性になってしまったりします。…むしろ「整頓に手間が掛かる」という不平も聞こえるかも知れません。
個人の意識は大切です。クリアオフィスのメリットを確認して、意識を高めましょう。
導入スケジュールを決める
クリアデスクはデスクをきれいにすれば終わりではありません。デスクを片付けても業務が可能なようにシステム作りをしなければいけないのです。
そのため、導入にはスケジュールを決めることが大切です。端末やサーバーなどの準備もあるため、余裕を持ってスケジュールを組みましょう。
運用のルールを決めておく
ルール決めも非常に大切です。
運用の標準化が可能であるばかりでなく、従業員の意識向上のためにも有益だからです。
逆に、ルールを決めておかないと、従業員間で認識のズレが生じ、クリアデスクへの取り組みそのものが進まなくなる可能性があります。
ただ、意識改革は簡単にできるものではありません。定着まで時間が掛かるのは大目に見る方が良いかも知れません。
従業員の教育
クリアデスクは従業員の意識が最も大切です。従業員教育が必要となるでしょう。
従業員教育では単に方法をレクチャーするだけでなく、情報漏洩のリスクについての啓蒙なども必要です。
尚、今ではパソコンで動画の視聴が可能です。レクチャーの動画を作って流す方法も良いと思われます。
管理職の意識
従業員の意識改革の推進のためには管理職の意識が向上しなければいけません。管理職の取り組みがいい加減だと、チーム内の従業員の認識も曖昧になるからです。
形骸化を避けるためにも管理職が率先して取り組むようにさせましょう。
まとめ
クリアデスクについて取り上げました。メリットだけでなく、実際に行う上での必要条件なども把握できたと思います。また、従業員の意識の重要性を改めて認識した方もいることでしょう。
オフィスを変えるためにはエネルギーが必要なのですが、改革には困難が付き物です。意識改革にしても、時間を掛けても確実に進めましょう。